2012年10月06日:マップの実用性

 
 
マップの実用性

前回、地図なんてどうでもいい、てなことを書いたが世間が騒ぐレベルで問題視していないという程度の意味であり、ほんとにどうでもいいわけではない。

たしかに、情報量および情報の正確性に関しては、iOS 6 搭載のマップには問題があり、それ自体ささいな問題でもないだろう。だが実際問題、アプリの実用性なんぞは利用者の視点が変われば、評価は大きく変化する。現時点で騒がれているのは、主に首都圏に住む連中の苦情が大半を占める。

やつらにとっての実用性では、ビルの形やコンビニの場所、果ては地下鉄のホームに至るまで事細かく網羅していないと気が済まないのだろう。いくらカーナビがこの先ずっとまっつぐだといっても、崖から飛び降りるバカはいない。大阪駅が餃子の王将になっていようが、マクドナルド駅やパチンコガンダム駅が存在しようが、現実の駅を見りゃわかるだろうが、と思う。

数の勝負になれば、人口密度の高い地域に住む者の意見が重視されるのは民主主義の基本だから仕方がないが、田舎者にとってはどうでもいい意見も少なくない。


そこで、天下ご免の政令指定都市、岡山市を新しいマップで見れば、3,000m 滑走路を擁する岡山空港は iPhone では「空港大橋」、iPad ではなぜか「岡山空港工業団地」である。どうだまいったか、とドヤ顔で自慢するほどモノでもないが、実用性云々でいえば少なくとも地元の者はそれが紛れもなく岡山空港であることぐらい iPhone に言われなくても知っている。

 

iPhone 5 & iPad (iOS 6):クリックで拡大

毎度、田舎田舎と卑下して聞こえるかもしれないが、自分が生まれ住んでいる岡山は結構気に入っている。何をやっても、そこはかとなく漂う半端な感じが、琴線に触れるのかもしれない。

市の中心部が北区にあるというのもユニークだが、その半端さがぱない。共通認識のために、あえて[田舎の基準]というものを、我が町岡山市を例に定義してみる。

ロフトはあるがハンズはない、スタバはあるがハーゲンダッツはない。のぞみは止まるが誰も用事がない、…と徹底的に中途半端路線まっしぐらである。

以前は、コロンビアとボーズ目当てに、明石大橋のふもとマリンピア神戸まで何度か出張っていた。昨年ついに、三井アウトレットパークが隣町にできると喜んだのもつかの間、どちらも出店が無いことにショックを受けたのは記憶に新しい。

学生時代、京都に住んでいた頃の友人の間では、岡山は広島より遠い場所にある県という認識で一致していたし、その後移り住んだ横浜では、その存在さえもがかなりあやしい影の薄い県ではあった。奈良や福井の田舎者に言われたかねえやと、当時は腹を立てたものだが、岐阜県出身の某君など、町内に信号があることを自慢にしていた時代だから、その基準も時とともに変わるのだろう。だいたい、自分自身の北日本に関する地理情報と同様に、関東以北出身の連中に大阪より西の正しい地理認識を期待するのは間違いである、と横浜時代は納得していたものだ。…余談である。

基本的に県庁所在地にアップルストアも無いような町、2050年9月末日(笑)までに出店予定もない町は、りっぱな田舎認定である。

ま、晴れの国岡山、とりあえず天気だけはよい。

本題に戻ろう。

今回、iOS 6 のアップル謹製ホラーマップのおかげで、それまで興味を示さなかった他社製マップアプリを使用してみて初めて、アップル謹製アプリの使いやすさを実感できた部分について、少し考えてみた。

首都圏に比べると、地方都市に住む者は普段車で移動することが多い。スーパーの駐車場が有料であることなど断じて許されない県はであるが、そんな岡山でもさすがにナビゲーションシステムが搭載された車は珍しくない。

が、我が愛車には今時珍しくそんなモノは付いていないし、自慢ぢゃないがエンジンを止めない限りカーラジオだってまともに聴き取れない。不慣れな道で迷った時には専ら iPhone を利用するが、そんな時一番役に立つのは、自分の現在位置がある程度分かることである。

昔々の時代には、車には地図帳を何冊か積んでおいて、該当エリアのページを開いては確認し、おもむろに進路を決定していた。その結果といえば、全く別方向に進んでいたり、予想外のとんでもない場所にたどり着いたりなどという、楽しい経験も少なくない。

主な原因は、現在位置の誤認である。

紙媒体の地図を参照するにあたっては、最低限自分の現在地と方角を把握していることの2点が必修となる。ぶっちゃけ、ここは何処?北はどっち?という基本的なことが分からなければ、地図は役に立たない。

GPSと各種センサーのおかげで、 iPhone で使える現代のマップアプリは、どんなゴミでも現在位置ぐらいはわかる。純粋な実用面で言えば、これだけでも価値はある。さすがに、いまさら地図帳を自炊して持ち歩くような酔狂な輩はいないだろうが、通信機能が貧弱な Palm 時代は、似たようなことをして喜んでいたものだ。

ガラケーに対して、スマホと呼ばれる機種が持つ最大のメリットはソフトウェアであり、電話という通信機能によって得られる膨大なデータを生かすもも殺すもソフト次第、というのはコンピュータの基本的な道理と同じである。ハードウェアは、情報処理能力によって快適な環境を提供するための器であるが、どちらが欠けてもその価値は低下する。

Mobile Safari で利用できる Google Map も含めて、多数のマップソフトを試す機会を得たのだが、どいつもこいつも酷いものが多い。見かけ上の地図データは、Google(ゼンリン)のデータを使用しているものもあり、見慣れた感じで安心感はある。また、個人的には Mac で好んで参照することも多いマピオンの地図も図版としては良いのだが、操作性となると途端にお粗末なインターフェイスが露呈する。

使用頻度もそれほど高くないツールやオプションで埋め尽くされ、モバイル機器の限られた画面が有効に利用されているとは言い難い。それはもう、機能のオンパレードで、ピンチアウトやダブルタップズームが使えるアプリでさえ、いまだに拡大縮小のプラス&マイナスボタンを表示しているモノもある。そのくせ、縦横も切り替えられないとか、横画面ではメニューバーとツール類で肝心の地図エリアが極端に狭くなるものなど、ため息がでるものばかりである。

その点においては、以前の iPhone 標準であったマップアプリも似たようなもので、 iPhone 5 より狭い画面で、縦オンリーであったことを考えると、必ずしも旧マップアプリがそれほど使いやすかった訳でもないことに気付くはずだ。

したがって問題は、そういった操作を如何にスマートなインターフェイスで実現するか、が鍵になる。他社製アプリでありがちなのは機能があっても、そこに至るまでの操作がクソすぎるものがあまりにも多い。

端的な例が、ピンをドロップという機能。

アップルのマップでは新旧ともに、右下にページがめくれた部分があり触れるとオプションが選択できる。地図と航空写真の表示切替えなどは、ここにまとめられている。オプションは言わば機能の紹介的な要素として、初めて使用するユーザに分かりやすくするために存在する。オプションで選択もできるが、何かの拍子に任意の場所でタッチし続ければ、そこへドロップされる機能を知ったユーザは、もうピンをドロップするために余計な手間はかけなくてすむように作られている。

新しい3D表示も、派手な Flyover ばかりが批判の対象になっているが、地図画面で3Dを選択すれば、進行方向に対してより遠方が確認でき、画面を有効に利用できるというメリットも生まれている。加えて、以前は方角が北固定であったのに対して、自由に選択できるので移動中の確認でも見やすくなっている。

また、以前は最下行に機能を配置したボタンバーが存在したが、 iPhone 5 では、より広くなった画面をさらに広く使用できるように、地図中にボタンのみを配置するという気の使いようである。

新しいマップをより広い画面の iPad で開いたときウザイのは、どんなに田舎へ行っても情報はスカスカのくせに、国道および県道の番号が画面一杯に、これでもかとしつこいぐらいに表示されることだ。


番号札こんなにいらねえだろ

しかし、これとて初めて訪れた地方で現実の視界、特に夜の林道を山越えで強行突破というシチュエーション(何度か経験済み)では、国道や県道の番号札が頼りという場合もあり、見た目より実用という点においてはメリットもある。(ま、SB 版の場合こんな状況ではいつも圏外、というのがお約束なんだけどね)

[追記:10/07]強行突破といえば、iPhone 購入以前2007年頃のこと、仕事で赴いた埼玉から岡山への帰り道、夜の山道での苦い経験を思い出す。

四日市から京都へ抜けるにあたって、そのまま素直に1号線を亀山方面に南下するのも面白くないので、山越えルートは覚悟の上で国道477号線を選択した。当日、静岡を出てすでに400km近く走行し、もう辺りは真っ暗である。両サイドに振ったフォグランプの光に、時折浮かび上がる道路脇に立てられた国道番号「477」の文字だけを頼りにひた走っていた。が、温泉を過ぎたあたりから、おいおいほんまかいなと思うほど、極端に道幅が狭くなってきた。

走行中、おにぎり型の国道標識番号の確認は怠らなかった。たしかに途中何ヶ所か、標識が生い茂った樹木に隠れていたかもしれないが、それでも「77」の文字はハッキリと認識していたはずだ。ま、どこの地方でも3ケタ国道なんざこんなもんだろう、と高を括っていたら目の前に忽然と現れたモノが、以下の写真である。


おのれ三重県、なんの恨みが…

国道477号線というのはいわゆる鈴鹿スカイラインなんだが、湯の山温泉近くでそのまま道なりに行ってしまうと、その道は県道752号線をわずか500mほど経由して、県道577号線になる。県道の番号標識は国道と違って六角形であるが、夜は蛍光塗料で番号ばかりが目立つ。おかげで疲労困憊の最中、5km以上も後戻りを余儀なくされ、以来三重県には良い印象を持っていない。それにしても、紛らわしい番号を隣接した道路に振って欲しくないなあ。


国道477号線側より

注:ちなみに上記写真、県道側から遭遇した時は、憤慨のあまり撮影する余裕などあるはずもない。なんとか国道に戻った後、再び同現場にさしかかった時に気を取り直して、自戒の念を込めて双方向から撮影したものである。

で、三重県といえば鈴鹿、可夢偉がついにやった。つぎは真ん中だぞ!!

…おもいっきり余談である。

実際、国道より広く快適な広域農道というのも地方には多く存在する。地元民はそちらをバイパスとして使用することが多いのだが、地図上では太く目立つ国道に比べて、きわめて貧相な記述しかされていない。その点では、Google もゼンリンも当てにはならない。

また、地元では主要県道は番号ではなく、もっと別の呼び方をしている場合が多いはずだから、せめて番号をタップしたら詳細情報で確認できるようになれば、画面を不必要に煩雑にすることなく、実用性を向上できるはずだ。

たとえば、路線モードと地形モードなどのレイヤー切替えで表示させるなど、もう少しそのあたりに改善の余地がある。拡大するごとに詳細データが表示される点など、優れた部分も多いし、適度に整理されすっきりした画面は却って見やすいぐらいだから、今後のユーザからのフィードバック次第では期待できるだろう。

問題は、ストリートビューであるが、これはどうもならんだろうな。倫理面の点から考えても良い子ちゃんのアップルは絶対やらないだろうし、その回答が Flyover なんだろう。マップアプリとは切り離して、別アプリで実現するしかない。

今回、新しいスタートをきったアップルのマップ、現時点での情報量と正確さでは、いささかの問題はあるとしても、それでは他社製マップはいったい今まで何をしていたのか、と思う。

大半が国内限定の、ごく限られた範囲のデータに基づくもので、正確性には優れるが地域限定のご当地マップに過ぎない。マップ問題が浮上した時に、真っ先にビジネスチャンス到来という見方を示すアナリストもいたようだが、現状のサードパーティアプリの為体を見るにつけ、所詮欠落を補完する程度の隙間商売の域を出ないだろう。

アップルに対抗するためには、まず Google を超えなければ、試合が始まらないことを考えると、あまり期待はできない。願わくば、世界各地でローカルの情報を保有するサードパーティとアップルがうまくタイアップすることだ。それが、ユーザにとって最善で最短の方策だろう。

ただ、よりグローバルな視点から言えば、こと情報量に関して、Google には一日は愚か何年もの長があるが、検索を生業にしている企業の地図は、見かけ上正確に見えても余計な情報を提供したがる。また、それに慣れてしまった現状では、不要な情報さえもが価値を持ったかような勘違いが起こる。いつもウザイと思っている、ダイレクトメールでさえ配信停止を選択した途端に、寂しく感じるアレににたようなものだ。

もちろん、それがあるからこそ無料で提供されているのだから、文句も言えないのだが、いちど自らの価値観をリセットしてみないと正しい判断ができないのではあるまいか。

実用性という点でいうなら、なるべくしがらみの少ない、ユーザにとって必要な情報を的確に提示しようとする、アップルのアプローチも今しばらく様子を見てみる価値はあると思うな。

マップにおける、田舎限定の提言かいな、でした。

…ということで、ヒトツよろしく。

2012年10月某日 Hexagon/Okayama, Japan

 

2012年10月06日