2012年10月24日:アップルの新製品

 
 
アップルの新製品

サンノゼ・カリフォルニア劇場で開催されたイベント、今回はリアルタイムで見ることができた。80分にも満たない短時間に、MacBook Pro、Mac mini、iMac、iPad、iPad mini と多くの製品が、駆け足で発表された。

CEO の自慢話(業績紹介?)に続いて、フィルによるハードウェア紹介、ジョナサンをはじめ各担当部門のバイスプレジデント演じるビデオと、最近では定番になっている構成である。が、あまり面白みはない。


盗用されたリーク情報によって、大半の製品にについてデザインやスペックはおろか、その製品番号や価格までもが事前に公開されているから、ということだけが原因でもない。

ティム・クックの、声を潜めるような話し方も好きになれないが、それ以上にフィル・シラーの要所にタメも無く、ただ淡々と矢継ぎ早に製品紹介をこなす姿勢に、いったい何をそんなに慌てているのか、と苛立ちさえ感じる。

スティーブは、新しいモノを紹介する時それがあたかも自分自身で作り上げたかのように、どうだ凄いだろうと言わんばかりのキメ顔で、その場にいる聴衆の反応を楽しんでいた。で、ウケがよければ本当に嬉しそうな笑顔で喝采を受け、それこそが開発スタッフに対する最大の労いになっていたはずだ。

デモンストレーションも体調が芳しくない晩年を除いて、たいていは自らが行い、操作性の良さや優れた部分については、それはもうしつこいぐらいに強調して、聴衆の失笑さえ買っていたこともある。

周到な準備と綿密に練り上げた原稿があるはずにもかかわらず、時には一瞬考え込んだり、慎重に言葉を選んで自らの(アップルとして公式の)見解を述べたりと、これまで行われた発表イベントの多くが、非常に含蓄に富んだ内容となっていたように思う。

もちろん立場の違いから、そのようなことを今現在のスタッフに望んでも仕方がないことは分かっているが、今更ながらに失ったものの大きさを感じる。

ま、ぶっちゃけイベントが面白けりゃそれでいいってもんでもないのだが、現実が歪曲しない分、製品そのものもなにかつまらないモノに見えてくるから不思議である。(口癖だったブ〜ンが懐かしい)

今回の発表内容も、大方の事前漏洩情報(≠予想)に沿ったものであるだけでなく、iMac などは一年半も待たされた揚げ句、この期に及んでまだ1ヶ月近く待たされることが判明しただけで、結構な脱力感を与えてくれる。

以前も書いたが、コスト的にはタダ同然の光学ドライブを外してなお、ユーザにとってそれと引き換えに得られるモノは何だろうという素朴な疑問に対してのアップルの回答は、エッジ薄さのみが強調され中央部分の膨らみは無かったことにされている、ほとんど詐欺同然のデザインと、ユーザによる増設に関してハードディスクはおろかメモリさえも拒絶する、鉄壁の鎖国仕様である。
[訂正:10/25]27インチモデルに関しては「ユーザーがアクセスできるSO-DIMMスロット×4」という表記をオフィシャルサイトに発見!


しかし、こんな場所にどうやってアクセスするんだろう?

Mac mini の例を見るまでもなく、標準で 1TB 程度なら何も無理して 3.5 インチにこだわる必要もないはずなんだが、なぜかスカスカの筐体内部の映像には、いかにも相当な発熱源になりそうなデカイ内蔵ドライブが未だに鎮座している。また、細かいツッコミを入れるなら、スピーカの開口部の位置が左右で異なるのも気になるが、この辺りも現物に接してみないと判らない。


横から見ればやっぱ茶碗だな

それでも今回のデザインによって、21.5 インチモデルなどは、9.3kg -> 5.68kg と40% 近くまで、それこそ劇ヤセな軽量化が行われたことは間違いないが、それってデスクトップ機である iMac のウリになりえるの?という疑問は拭えない。

しかし、このダイエットに関連して iPad mini が 308g とフルサイズの iPad に比べて約半分の重量を実現しているのは、正直ちょっと驚きである。(iPad 2=601g iPad Retina=652g)

アルミ製品の設計・製造のノウハウに関しては、長年の経験から手慣れてきたのだろう。その技術は小型軽量化だけでなく、当然コストダウンにも大きく貢献するのだろうが、今回のラインナップに設定された価格政策(国内価格も含めて)を見る限り、残念ながら浮いた分は全てアップルに持って行かれたようだ。

スペックの割に高価格という、かつてのアップル製品の悪い慣習が見え隠れする価格設定というか、価格バランスはいただけない。iPad 2 を併売にするのなら、iPad mini のエントリーモデルはバックカメラを省いてでも、もっと思い切った低価格にすべきだろう。

また、上位モデルにはプレミアム製品の位置づけで高速 CPU (A6X) とか、より高解像度を奢った製品(小さいことがウリの高級モデル?)など、ラインナップにメリハリを付けて欲しい。高価格だがコストパフォーマンスに優れる、所有欲(物欲)をそそる何かをアピールできるモデルだ。

たぶん、アップル的にはコスト面で有利なのだろうが、今回の MacBook Pro Retina でも、単に内蔵ストレージが異なるだけでラインナップを構成しようというのは、あまりにもお手軽すぎて芸がないと思う。

以前、単に色が黒いというだけで高い価格を設定した MacBook ポリカシリーズがあった。ま、自身アレに嵌められたクチではあるが、客観的に見れば素直に納得出来るものではない。そういえば、ステンレススチールのキラキラ iPod shuffle というのにも、嵌められた気がするが…。(たぶん、私の場合は数少ない例外に違いない。)

いずれにしてもアップルは、一般的なユーザに対して有無を言わせず納得できるようなプレミアムな製品の設定が、つくづくヘタクソなメーカであると思う。(う〜む、説得力に欠けるなあ)

個人的に新しい iMac に期待したのは、Retina は無理でもそれなりの解像度アップと、モジュール化された 2.5 インチドライブによるスロット式で、ストレージのバージョンアップがユーザレベルできるような機能だった。そのほうが、デスクトップ機にとって薄く軽量化することより遥かにメリットが大きいことは明らかであろう。

MacPro の為体を見るにつけ、現在のラインナップからは iMac と Mac mini こそが、その代わりを担える製品と位置づけられるものと考えていただけに、Mac mini も含めてドライブ交換が簡単にできない仕様というのは、全くもって不条理である。

現状のコンピュータ関連製品に関して、不具合および故障原因の大半はストレージによるものが多い。それ故、不必要に製品寿命を短くするだけでなく、常に安心して使用できるかという信頼感にも悪影響を及ぼす一因になっている。

ストレージの進歩は目覚ましく、後になればなるほどお買い得になり、低価格で大容量が手に入るようになる。が、いつの時代もそれは決して今ではないというのが現実である以上、購入時に将来のことを考えて先行投資を強いられるのは、あまり嬉しくはない。

そんな、不満たらたらな中にも個人的には最も期待するのは、SSD と大容量 HDD を融合したフュージョンドライブだ。単なるキャッシュではなく、OS によって管理された RAID システムだろうと想像するが、惜しむらくはコイツをオプションでなく標準装備してくれりゃあ、今回の新製品の目玉になったかもしれない。

MacBook Air を使用した経験から、次回メイン機導入のおりは、いっそ容量は割りきって起動ドライブは SSD、保存領域は外部に雷ドライブでもと考えていたが、それを一気に解決してくれそうな予感がする。

で、当面 iMac を見送り、またしても Mac mini に期待を懸けて(賭けて)いるのだが、果たして…。

…ということで、ヒトツよろしく。

2012年10月某日 Hexagon/Okayama, Japan

 

2012年10月24日