2012年12月14日:不機嫌な沈黙

 
 
不機嫌な沈黙

iTunes 11 アップデート ver. 11.01 (12)

標題は、TidBITS 日本語版最新号からのパチリであるが、最近のアップル製品にユーザが感じている鬱屈感を上手く表している言葉だと思う。

ユーザインターフェイスに関して、ウェブブラウザなどの場合は、主たるは表示されるコンテンツでありその機能は脇役であるので、Safari などのボタンなどがモノクロなのは当然であるとしても、ジュークボックスたる iTunes では主役の音楽自体、主にユーザの聴覚に訴えるのだから、視覚を担当するプレーヤがあまり地味では、面白味がない。

したがって、かつての MP3 黎明期に多数存在したミュージックプレーヤソフトにありがちな、安物のカーステレオのようなケバくチャラい外観はご免被りたいが、今回のような作品としてのアルバムを見せる(魅せる)アップデートに関しては、個人的には許容範囲でありなにも問題はないと思う。

が、細かく見ればそう単純に喜んでもいられない事実に気がつく。


一見シンプルな外観を保っていながら、実際に使用してみると、これだけ雑然とした印象を与えるインターフェイスも珍しい。

山猫では、iTunes 11 のサイドバーアイコンではカラーで、Finder のサイドバーアイコンはモノクロという、スノレパ上で iTunes 10 を使用していた時と、全く逆になっている。標準書体も、またもや Lucida Grande から文字間ピッチの狭い Helvetica と思しきものに変更されたようで、せっかく前回見やすくなったのに後退である。

あまり意味のない変更を繰り返すぐらいなら、表示書体ぐらいユーザの選択に任せりゃいいだろうが、と思う。

相変わらず迷走を続ける、OS X のユーザインターフェイスを象徴するかのようである。

サイドバーのカラーアイコンや、今回のアップデートにより復活した「重複する項目の表示」なども歓迎すべきことではあるが、元々あったものなんだから、さほど褒められたものでもない。

しかし、外観上未だに明るい背景以外の選択肢は無く、今一つ二つ、不満も残る。加えて、iTunes のミュージック(およびビデオ)プレーヤと並ぶもう一つの側面である、音楽管理ソフトとしての機能についての不満が多い。

サイドバーの表示/非表示はユーザの任意であるので、必要に応じて切替えれば良いのだが、従来サイドバーに表示できていたアルバムアートの表示機能を廃止している。

おかげで、アルバムアートの登録手順が煩雑になってしまった。特に、新たに取り込んだアルバムへ既存のアルバムからアートワークを流用しようとすると、かなりトリッキーな技が必要になる。

本来、ダイアログ内などで表示されるテキストに対しては、右クリが無効な上にメニューにはコピー機能が表示されていなくても、コマンド+Cが有効であることはたまにある。が、まさか iTunes で割と頻繁に使用されるアルバムアートワークの編集機能に関して、制限を掛ける必要があるとも思えない。それに気付くまでに少し時間がかかっただけなんだが、これってストアから音楽を購入しない者に対する嫌がらせなんだろうか?

従来より、サイドバーではアートワークの表示/非表示機能を持っていたのだから、さほど邪魔になるモノでもないし、サイドバーそのものを非表示にできるのだから、余計なことをする必要はあるまい。同一アルバム内でも、楽曲単位で異なるアートワークを設定することもあるので、選択した曲のアートワークを確認するだけでも余計な手間がかかるような変更は頂けない。

元からある機能を犠牲にすることなく、新しい機能を追加することは十分に可能であり、それを如何にシンプルに見せるかがデザイナーとして腕の見せ所であるはずだ。機能を削ることがシンプルへの近道だと考えているなら、それは単なる手抜きでしかない。

少なくとも、かつてのアップル製品の伝統であった、直感的な操作とは程遠いシロモノであることは間違いない。

なぜアップルがこうも毎回毎回、従来からのユーザの神経を逆撫でし、わざわざ反感を買うことが明らかなことを好んでするのか、その明確な理由は分からないが、このあたりが毎度メジャーアップデートの度に戦々恐々とさせられる所以である。

また、ミニプレーヤへの切替えボタンも、従来ズームボタン(緑)を流用するという、掟破りな設定を長年ゴリ押ししておきながら、iTunes 9 で様子見のつもりか、一時的に変更したことがある。

個人的には、ズームボタン本来の姿なのだから、タイトルバーのダブルクリックや、それなりの代替機能やボタンなどを用意すればそれで良いと思っていた。だが、あまりに反感が多かったのかその後元に戻されたという経緯がある、アップルにとっては鬼門でもある。

今回、ほとぼりが覚めたとみて、またもやの変更である。それもタイトルバーを無くした上で、半端な位置に半端なデザインで、当然思いっきり使い難い。ショートカットなどは、ご丁寧にオプコマ+Mとオプコマ+3の二本立てである。オプコマ+Mはミニプレーヤへの切替えだからまだ理解できるが、フルサイズウィンドウを表示した上にまだミニプレーヤを表示するなどという呆れた機能など、いったい何処のバカが考え出したのだろう。

デバイスおよび楽曲の管理という点においても、インターフェイスがイマイチな点は多い。

まずは、iOS 機器を有線/無線に限らず接続した時、使用状況を表す棒グラフに詳細情報が表示されない。いちいち該当の場所にポインタを持っていかないと表示されないというお粗末なものであり、一瞥で概略を把握できていた従来の表示機能に遥かに劣るものである。

本来ヘルプ的な要素には用いられる手法であるが、情報を表示するべき画面で情報を隠すことに、いったい何の意味があるのだろうか。

アプリにデータを登録する画面でも、未だにファイル単位のみでフォルダ単位では選択できない。複数ファイルの選択は、シフトまたはコマンド+クリックが必要になる。また、iPhoto から写真を登録する場合も、アルバムは何度閉めても選択の度に全開であり、アルバム数が多いと選択に苦労させられるところもなども、相変わらずだ。

ただ一つ、何も変更していないにもかかわらず、App タブを選択しただけで「変更を反映させるか」などと聞かれなくなった点のみは、改善されたようだ。

デフォルトのサイドバー非表示状態では、音楽や動画は完全に分離され、新たに増えたホームビデオなどの分類など詳細なタグを管理していないと、不慣れな者は目的のものを探し出すのに苦労するだろうな、ということが容易に想像できる。(たぶん、iTunes Store での購入者に、焦点を絞ったに過ぎない変更なんだろうけどね)

iOS 版のミュージックアプリでも指摘したことであるが、リスト上部に並ぶボタンは、プレイリスト以外では表示形式も変更できない、ただの並べ替え機能に過ぎない。そんなモノは、一覧表示で項目名をクリックすれば出来ることであり、わざわざボタンを設置する程のものでもない。どうせ、単にリスト上部に隙間が出来たから、並べてみただけだろう。

また、ステータスバーに表示される項目数などの表示も、以前はクリックすることで表示方法を変更できていたが、これも機能しない。ただ、不思議なのは iTunes 10 からアップデートした時に、最後に表示されていた状態で、固定されているように見える。

別のMacをアップデートする時、試しにあえて別の表示を選択したものとは異なる表記になっていることから、単に機能を実装し忘れた可能性もある。が、残念ながら今回のアップデートでは復活しなかった。

ま、最近のアップルを見ていると、そのこと自体に気付いているかどうかも、かなりあやしい気もするが、…。

一見新しく見える iTunes 11 のインターフェイスも、事細かに使用してみるにつれ、今迄あった機能にわざわざ制限をかけて、別の分かりにくい機能を追加することで、構成されていることが分かる。

要するに、何をするにもことごとく遠回りを強いられ、およそシンプルとは対局にあるインターフェイスと言わざるを得ない。この点においても、直感的な操作からどんどん遠ざかっており、ユーザが従来の経験から得たものを全く無駄にしている。

よもや、今後 OS X 全般にわたって、このような無意味で無駄な変更が行われることが無いよう、ただただ祈るばかりである。

アップルが行うイベントで、発表される売上げなどの業績と異なり、ネガティブな印象というものは、単純な数値の多寡では計れないモノが存在する。朝令暮改で安易な仕様変更、いつまでたっても修正されないバグや意味のない機能制限など、あまり既存のユーザを舐めていると、いずれ有用なフィードバックさえ得られなくなる。

念のために言っておくと、ドザな連中は無償でダウンロードできることで iTunes が只だと思っているかもしれないが、iTunes は OS X の基本機能であり Mac を購入するに当たってその料金に含まれているソフトウェアである。バンドルされているからといって、マックユーザとっては決して無料ソフトなどではない。

したがって、iTunes Store を利用しないマックユーザでも遠慮は要らない(と、思う)。文句があったら、ハッキリと言ってやろう。

そしてアップルには、文句を言うヤツが減ったことや、だれも何も言わなくなったことを、単純に受け入れられたとか賛同を得られたと勘違いしていると、いつかしっぺ返しを喰らうことになるぞ、とエラそうに上から目線で言っておこう。

新たな製品、新たなバージョンが発表される度に、各方面で賛否両論、話題には事欠かないアップル製品ではあるが、称賛も非難も騒がれているうちが華である。

アップルは、たかが地図ごときで大騒ぎしている、声だけは大きな連中よりも、もう少し不機嫌な沈黙にも注意を払うべきだと思うな。

…ということで、ヒトツよろしく。

2012年12月某日 Hexagon/Okayama, Japan

 

2012年12月14日